5 モチーフを見ずに描く
今回は絵のモチーフについて考えてみましょう。
身近な題材をと言われて、季節の野菜や花、
皆さんたくさん描いてますね。
飼っている犬や猫もいつでも観察できるので
とっつきやすいかもしれません。
でも、
見ながら描いて、うまく個性が出せますか。
目の前のモチーフに縛られて、写生的だったり、
輪郭をなぞるような生気のない線を描いてませんか。
一度、何も見ずに自分に何が描けるのか、試してみましょう。
失敗したコピー用紙の裏側などに柔らかい4Bぐらいの鉛筆で、
走り書きで構いません。
なるたけ、たくさん。細かく描かずにそれが何かわかる程度に簡単に。
1時間ぐらい頑張ってみましょう。
たくさん描いたなかで、
それが何なのかうまく特徴をとらえて、単純な線で表現できている絵
(例えばにんじん)があれば、それが、あなたの絵です。
今までの生活のなかで、
無意識に自分の中ににんじんのイメージが出来ている事になります。
イメージが出来ているのですから、にんじんの絵に合わせる言葉は
たくさん出てくるはずです。
こんな食べ方が好きとか、あのとき食べたのが一番おいしかったとか。
昔の友達に、にんじんというあだ名の子がいたとか。
いろいろとイメージがし易いように項目をいくつも挙げておきます。
鉛筆片手に挑戦してください。
家の中のモノ
玄関にあるモノ
居間にあるモノ
キッチンにあるモノ
浴室、洗面にあるモノ
寝室にあるモノ
2階にあるモノ
寝室にあるモノ
和室にあるモノ
自分の部屋にあるモノ
愛用品
ハンドバックの中身?
ちょっと、休憩。
目をつぶって思い出して見る。
私の場合
和室にあるのは
自分のつくった照明
洋たんす
桐たんす
たくさんの写真立て
ふとん
枕
ハンガー
洋服
お気に入りのトレーナー
消防団制服
収納ボックス
へそくり
鏡
などなど
例えばこのなかの桐たんすについて
この桐たんすは、隣町の蔵の改修の際に頂いたもので、大正時代ぐらい
のものです。補修して、着色、オイル仕上げして使っています。
持ち運びしやすいようにとても薄い材で作ってあります。
このあたりの桐材は台湾桐が多くて、成長がはやく、
性質はあまり.....
かなり説明くさいですが、言葉がでてきます。こんな風に
見ないで描いたモノについて
思い出や自分の気持ちなど、思いつく言葉や文章をメモしていきます。
がんばって、100文字ぐらい書いて見ましょう。
そして、その言葉と絵を眺めていると、何かピンとくる短いフレーズが
出てきませんか。
桐タンスの絵+まだまだ使えるもらいもの
こんなのでいいのかな。
まだまだ、いきましょう。
家の外のモノ
町並み
好きなお店
良く行くところ
良く食べるモノ
旅行の思い出
過去
子供の頃好きだったもの
ぬいぐるみ
おもちゃ
家族の好きだったもの
現在
今好きなモノ
今欲しいモノ
未来
いつか欲しいモノ
捨てるに捨てられないモノ
これなんかいくらでも言葉が出てきそうです。
捨てて後悔したモノ
とりあえず、こんなところで最後に
動物
犬
猫
きつね
さる
うさぎ
くま
うま
さかな
へび
動物園にいる動物
昆虫
苦手な虫
好きな虫
植物
花
果物
野菜
お疲れ様。最後の野菜が簡単に感じられましたか。
鉛筆の走り書きと100文字のメモ
これが絵手紙のイメージの下書きです。
あとは、いざ本番。お好きに描いてください。
モチーフを見ようが見まいが構いません。
補足
いつも、モチーフを見ながら描いている方にとっては、
今回のやり方は楽しい練習ではないでしょうか。
意外とうまく描けるモノ、いつも手に取って使っていても描けないモノ。
いろいろあって、面白いと思います。
鉛筆でピーマンを見ないで描いて、
あまりピーマンに見えなかったら、
実物と比べてよく観察してみましょう。
そうすれば、絵に足りなかったところが見えてきます。
中央のくびれた感じとか、モッコリした感じ、ヘタのギザギザ、長さなど、
ピーマンらしさを再発見できるでしょう。
ひたすらハガキに向かって本番もいいですけど、
専用のハガキは結構高いですよね。もったいないです。
モチーフの特徴を輪郭でとらえる練習は、
鉛筆で落書きでもいいではないですか。
色は偉大です。
輪郭だけではピーマンに見えない絵も、
鮮やかなグリーンを施せば、ピーマンに見えます。
色自体が、人間共通の情報を持っているからです。
同じ絵に黄色や赤を塗ると、パプリカになります。
紫に塗ると、人によってはナスに見えるかもしれません。
絵手紙を墨書きして、絵の輪郭線と言葉だけの状態では、
見ていてちょっと寂しいし、間が持ちません。
彩色すると、画面がぱーっとあかるくなり絵手紙っぽくなりますが、
なにかしまりがない。
そこでハンコをペタッと押すと妙にしっくりするから不思議です。
終わりに 絵について今回は書くつもりだったのに、結局、絵からの言葉の連想に
話が飛んでしまいました。
私は、絵と言葉の関係に個人的にとてもこだわっているのだと、
メールマガジンを作っていて改めて感じました。
いくつかの指導書を立ち読みしていておやっと、感じることは、
絵手紙にむずかしい決まりはありません。
こんな、絵手紙の自由さを必ず書いているのに、
絵手紙は下書きしない。
これを、絵手紙のルールみたいに書いている事です。
これでは、下書きして絵手紙を書いたらばつが悪くなってしまいます。
自分らしい絵手紙を描こうとして努力したり楽しむなら、
なにをやってもいいのではないでしょうか。
下書きしないのは、書の世界。
書道や水墨画のやり方です。
他の絵画では、デッサンや下書きをするのが普通です。
ラブレターだって何度も書きなおします。
もうひとつ気になるのは、
絵手紙は言葉が大事。
と書いているのに、絵手紙を描く時、
絵を描いてから言葉を考える順番になっていること。
そして、
絵に添える言葉についてのアドバイスが曖昧。
ピッタリとか、光るとか、絵と関係のない言葉にしてみる、
絵を擬人化してしゃべらせる。絵の説明は避ける。
など読んでいてちょっと苦しい印象を受けます。
答えのない質問に無理やり答えようとしている感じです。
私は、下書きはしません。
でもイメージの下書きはしています。
絵と言葉を頭の中で組み合わせて、
これならなんとかなりそうだと思ったときに、
描きます。絵と言葉は同時進行なのです。
絵がうまいこと描けなければ描きなおし、字をいれます。
なにかピンとこなければ、しばらくオクラ入りです。
まいっかと思ったら色をつけてハンコを押して出来あがりです。
まあ、ともかく、イメージの下書きがあれば、
言葉も小細工せずに素直にでてくるし、
絵と言葉の関係も自然と楽しいものになる、と思うのですが、
みなさんはどう思われますか。
新品の大工道具は高いので、骨董市で掘り出し物を
探します。これだと思って買ってきて研いで使ってみると
あ~あという事もしばしば。